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~MIRAI Collection Vol.1
「ラグーナベイコート倶楽部『MAROCE』」~

ラグーナベイコート俱楽部のメインダイニング『MAROCE』料理長、奥村洋隆氏

「料理は自然を素材にし、人間の一番原始的な本能を充たしながら、その技術をほとんど芸術にまで高めている」とは芸術家にして美食家、北大路魯山人の言葉。そう、空腹を満たすだけでなく、心も満たす料理はいわば“食べる芸術”です。
音楽や絵画のように過去から未来へと受け継がれ、「今」という時流を採り入れ進化し続ける――。そんな伝承と革新をコンセプトにした料理こそ、リゾートトラストグループが取り組む「ミライコレクション」です。はたして、その真髄とは。シリーズ第1弾では、ラグーナベイコート俱楽部のメインダイニング・イタリアンレストラン『MAROCE(マロ―チェ)』をレポートします。

おいしいから受け継がれる、シンプルな摂理を創意工夫で追究

ラグーナベイコート俱楽部のメインダイニング『MAROCE』料理長、奥村洋隆氏。ミライコレクションのメニュー作りは「考え込まず、ひらめきに委ねる」と語る。

「ハンバーグやビーフシチューなどの定番料理は明治初期に欧米からもたらされた料理です。それが今なお人々に親しまれている理由はシンプルに“おいしい”から。こうした、おいしいからこそ時代を超えて受け継がれる“王道”の料理に現代のエッセンスを採り入れながら未来に受け継いでいきたい。これが、私の考えるミライコレクションです」。
そう語るのは、ラグーナベイコート俱楽部のメインダイニング・イタリアンレストラン『MAROCE』の料理長・奥村洋隆氏。この道20年以上のイタリアンシェフです。
この日、私たちに供されたのは『ミライコレクション秋』。前菜からデザートまで、全9品で構成される充実のコース料理は、その一皿一皿に、シェフが語る「王道を未来へとつなげる」ためのさまざまな工夫が凝らされています。

イタリア伝統のデザートを模した料理で、
秋の味覚を一皿で表現

オマール海老と秋の味覚のマチェトニア・ブラータチーズのパンナコッタ~イタリア産オシェトラキャビアのアクセント~。近隣で採れた旬のフルーツが彩りを添える。

たとえばアンティパストの一品目「オマール海老と秋の味覚のマチェトニア ブラータチーズのパンナコッタ イタリア産オシェトラキャビアのアクセント」。一見、デザートのような佇まいですが、その正体はチーズの上にオマール海老やキャビア、地元産フルーツなどをトッピングしてパンナコッタに見立てたもの。
「昔からイタリアに伝わるデザートであるパンナコッタを料理にアレンジしてみたら面白いのでは?という発想から生まれました。ベースとなるのはモッツァレラチーズの一種であるブラータチーズ。これをクリーム状にしてパンナコッタ風に仕上げています」(奥村シェフ)。
主役であるオマールを海老のうま味を引き立てる、キャビアの塩味とヨーグルトの酸味、さらにシロップ漬けされたフルーツの甘味がハーモニーを生み出し、食べたことのない味を生み出す――。イタリアの伝統的なデザートを、新たな料理へと生まれ変わらせた一皿は、まさにミライコレクションを体現する一皿です。

一見、バジル。でも正体は…。
革新と古典がせめぎ合うジェノベーゼ

パスタ「鮑とトロ茄子 大葉のジェノベーゼパスタ 香ばしい牛蒡のフリット」。地元愛知県の伝統野菜・天狗なすのトロトロ食感が、コリコリした鮑と絶妙なコントラストを生む。

伝統を受け継ぎながらも、そこに新しい工夫を凝らす料理の数々。スープのあとに登場したのが、「鮑とトロ茄子 大葉のジェノベーゼパスタ 香ばしい牛蒡のフリット」です。目にも鮮やかなグリーンは一見するだけではオーソドックスなジェノベーゼのように見えますが…。
「バジルというのは個性の強いハーブなので、食べすぎると後の料理にも影響してしまいます。そこで、私は和食でおなじみの大葉でバジルを代用。この『日本人の口に合うか?』という点もミライコレクションを作る上での見逃せないテーマです」(奥村シェフ)。
一方、コリコリとした鮑と食感のコントラストを生み出しているのが、口に入れた瞬間とろりととける奥三河産の天狗なす。実は奥村シェフは、かつてはなすが苦手だったものの、天狗なすに出会ってからは一転し、大好物になったのだとか。そんなとろとろの天狗なすとさらなる食感の妙を生むのが、パリパリ食感が楽しい牛蒡のフリット。
たった一皿に、いくつもの味と食感のギミックがしかけられ、口へ運ぶ楽しさにあふれています。

独創的で多彩な料理の原点は、
シェフのふるさと三重の伝統料理に

「くまもとあか牛フィレ肉の炭火焼き ジャンボマッシュルームとグアンチャーレの旨味 秋の大地をイメージして」。もみじは薄く削いだ茄子を油で揚げたもの。

伝統的なイタリア料理の技巧を用いながら、日本人ならではのアイデアを柔軟に取り入れて独自の境地を切り開く奥村シェフ。その料理の原点とはどのようなものなのでしょうか。
「私が生まれ育った三重県では、伊勢うどんが家庭で当たり前のように食べられていました。やわらく茹でたうどんを出汁醤油だけで食べる。そんなシンプルな味こそが、私の料理の原点です」(奥村シェフ)。
最後に奥村シェフが、ミライコレクションを通して実現したい夢を聞いてみました。
「いつか、ラグーナベイコート俱楽部がある蒲郡の農家さんや近隣のホテルなどが一体となって、地域の活性化につながるようなイベントを開きたいですね。私にとっては生産者さんの存在は、とても大きなウエイトを占めています。料理は生産者の方が食材を収穫することから始まっているわけで、その方たちがもっとフォーカスされるべきだと思うのです」(奥村シェフ)。


ホテルがある土地に根付いた歴史や文化…さまざまなファクターを、料理という技巧でつなぎ合わせて、1つのストーリーとして結実させる「ミライコレクション」。「日本の恵み」、「伝統」、「革新」をテーマに、食べる人に一期一会の感動を提供する――いわば料理の可能性をも広げる、意欲的な取り組みです。
「ミライコレクション」では、今回紹介したイタリア料理の他にも、日本料理や中華料理、フランス料理もラインナップ。一人ひとりが独自の物語を持つ料理人が、どのようにミライコレクションというテーマを解釈し、調理するのか、その個性や違いを楽しむのも大きな楽しみです。

2024.10.23