GOURMET

その一杯から始まる、魅惑のひととき。
憧れの“ホテルバー”の扉を開いてみませんか?

バーカウンターにカクテルが置かれ、奥にバーテンダーが立っている様子

「ホテルのバー」というと、どこか特別で、少し背筋が伸びる場所。格式があって緊張しそう、常連でなければ入りづらい…そんなイメージを抱く方も多いかもしれません。
でも実は、ホテルバーほど「一見さん」に優しい場所はありません。必要なのは、ドレスコードでもお酒の知識でもなく、ほんのちょっとの好奇心だけ。ホテルバーは、大人の感性がゆっくりとほどけていく場所です。
ホテルに宿泊しても、しなくても――その扉の先には、きっと忘れられない一杯と、この先の人生をも楽しむことができるひとときが待っています。

バーテンダーがカクテルを客に手渡している様子
バーテンダーがグラスにお酒を注いでいる様子

ホテルバーは、実は入りやすく使い勝手のいいバー

バーカウンター越しにバーテンダーの所作を眺めるのもホテルバーの楽しみの一つ。シェーカーを振る小気味いいリズムや氷をステアする音が、あなたを非日常へと誘います

氷がグラスの中で音を立て、シェーカーのリズムが夜の静けさに溶けていく。
ホテルバーでは、そんな小さな所作の一つひとつが、目のごちそうになります。
丁寧な言葉遣いと、洗練された手つき。好みをそっと引き出しながら、その人にぴったりの一杯を生み出す――そんな、バーテンダーとの対話も、バータイムの醍醐味のひとつです。
バーテンダーはいわばお酒のコンシェルジュ。たとえば「甘めが好き」「強いお酒は苦手」といったように、好みや気分を素直に伝えるだけで、自分だけの一杯を提案してくれます。だから、時にはメニューを眺めるだけでは見つからない、意外なセレクトが飛び出すことも。
「お酒はあまり強くなくて…」と正直に伝えても大丈夫。無理なく楽しめるカクテルを、笑顔とともに提案してくれるはずです。

夜景を肴に語らう、静けさに満ちた贅沢な時間

バーテンダー越しに芦屋マリーナの夜景を望む、芦屋ベイコート倶楽部のバーラウンジ。思わずここが日本であることを忘れてしまう

ホテルバーが愛され続ける理由のひとつに、その“景色”があります。
大きな窓の向こうに広がる夜景、海のさざめき、遠くの灯り。そのすべてが、グラスを傾けるひとときを静かに引き立ててくれます。
特に高層階のバーや、海辺に佇むホテルのバーでは、時間の流れさえも変わったように感じられるもの。ふと外に目をやれば、街の光がまるで星のように瞬き、内装の一つひとつも、照明の陰影までもが、静かなドラマを紡いでいます。
そしてその舞台となる「ホテル」という場所自体が、非日常という名の安心感を与えてくれる存在。旅人を受け入れる懐の深さと、ほどよい距離感のもてなしが、“自分を整えるための時間”を静かに支えてくれます。
大切な人と語らう夜も、一人きりで過ごす余白のような時間も、どちらもホテルバーは温かく受け止めてくれます。日常の延長でもなく、旅の非日常でもない。そのあいだにある、贅沢な“静けさ”こそが、ここにしかない魅力です。

最初の1杯に何を頼めばいいか分からないなら

バーに入った瞬間、まず悩むのは「何を頼もう?」ということかもしれません。
そんなときにおすすめなのが、次の定番とも呼べるカクテルです。

普段とは一味も二味も違いを味わえる「ジントニック」

透き通るグラスに広がる、きりっとした爽やかさ。
ジンは、ジュニパーベリー(杜松の実)を中心に、ハーブやスパイスで香りづけされた蒸留酒で、そのシャープな香りが特徴。トニックウォーターと合わせることで、すっきりとした飲み口になり、食前酒としても人気です。どのバーでも必ずと言っていいほどメニューにあり、味わいの違いでバーテンダーの個性も感じられます。まずは一杯、というときに、迷わず選びたいスタンダード。
近年はクラフトジンの人気が高まり、ラインナップの豊富なバーも増えてきました。ジンごとに香るボタニカルの個性を楽しむことができ、飲み比べることで、自分好みの一本に出会えるのも魅力のひとつです。季節との相性を意識した選び方をすれば、より印象的な一杯として、お客様にご提案することもできます。

ジントニック

“カクテルの王様”とも呼ばれる「マティーニ」

ひと口飲めば背筋がピンっと伸びるような、凛とした味わい。
ジンとドライベルモット(白ワインをベースにハーブを加えたリキュール)を組み合わせたマティーニは、アルコール度数が高めのショートカクテルを代表する一杯。グラスの中に佇むオリーブやレモンピールは、シンプルな装いの中に個性を秘めていて、静かに語られるストーリーのよう。映画のワンシーンをなぞるように、長きにわたって高い人気を誇る「マティーニ」が、特別な時間を演出してくれます。

マティーニ

その土地の旬を味わえる「季節のフルーツカクテル」

見た目も香りも華やかで、気持ちをほどいてくれる一杯。
その季節にいちばん美味しい果物を主役に、ハーブやスピリッツで繊細に仕立てられたフルーツカクテルは、バーテンダーの感性がきらめく“作品”のような存在。たとえば春にはイチゴや柑橘、夏には桃やスイカなど、旬の素材がグラスの中に生きています。甘口も多く、カクテルに不慣れな方でも安心。どんな味か尋ねてみるだけで、バーテンダーとの距離もぐっと近づきます。
旅先でしか味わえない特別感や旅の想い出に花を添えるひとときを感じたいなら、ぜひともオーダーしたい一杯です。

季節のフルーツカクテル

ホテルによってはそのバー独自の「オリジナルカクテル」を用意していることもあります。何を頼めばいいか迷ったときには、そうした“その場所ならでは”の一杯を選ぶのもおすすめです。
たとえば芦屋ベイコート倶楽部のバーでは、数種類のオリジナルカクテルが用意されており、スタッフが丁寧に紹介してくれます。
バーテンダーに「何かおすすめを」と伝えるのも、ホテルバーらしい楽しみ方のひとつです。


イタリア料理 リストランテ オッツィオ

ホテルバーは、日常のすぐ隣にある“非日常”。背伸びをする必要はありません。ただ静かにグラスを傾けるだけで、心の緊張がほどけていきます。
誰かと語らう時間も、一人で静かに過ごす夜も、ホテルバーはどんな夜にもそっと寄り添ってくれるとっておきのチルスポット。さらに、旅先であればそのままホテルの素敵なお部屋でバータイムの余韻もゆったり楽しめます。
きらめくボトルの向こうにある、あなた自身の時間を見つけるために。そんな一杯を、そっと始めてみてはいかがでしょうか。

2025.7.7