一皿に込める、お客様へのホスピタリティ――
芦屋ベイコート倶楽部「LUBANO」が追求する
至高の料理と接客の美学

~メインダイニング「LUBANO」マネージャー・林光利氏に聞く~
瀬戸内海を目の前に望む芦屋マリーナに佇む、芦屋ベイコート倶楽部。そのメインダイニングであるイタリアンレストラン「LUBANO(ルバーノ)」では、旬の食材を活かした本格的な料理と、細部まで行き届いたサービスがゲストを迎えます。
「LUBANO」で長年にわたりレストラン運営に携わってきた林氏は、「料理だけでなく、空間やお客様との会話も含めて、トータルな“食の美学”を提供したい」と語ります。料理とホスピタリティの関係、そして林氏が思い描くこれからについて聞きました。
芦屋ベイコート倶楽部のメインダイニングを率いるということ

2013年に新卒で入社し、エクシブ鳴門のレストランでキャリアをスタートした林氏。2021年に芦屋ベイコート倶楽部へ異動し、現在は「LUBANO」の責任者を務めています。
「それまでエクシブブランドのレストランしか知りませんでしたので、ベイコートに異動することが決まったときは正直プレッシャーを感じました。ベイコート倶楽部は私たちリゾートトラストグループの最高級ブランド。その一店舗を任されることの責任の重さを実感しましたね」(林氏)
お客様の違いも大きいです。鳴門時代は60代以上のお客様が多かったのですが、芦屋ベイコート倶楽部では40~50代がメインです。年齢層が異なることもあり、求められるサービスの質も大きく変わります。
「鳴門はリゾート地ということもあってか温かみのある、どこか家族的な接客が喜ばれましたが、芦屋ではより洗練されたサービスが求められます。お客様との距離感や会話の内容まで、常に細かく意識しています」(林氏)
料理とホスピタリティをつなぐ役割

「私たちは料理やお酒を提供するだけではなく、レストランという空間全体を演出する役割を担っています」(林氏)
シェフが考案するメニューに対し、林氏はサービスの視点からお客様の反応をフィードバックし、料理の完成度をさらに高めるサポートをしています。基本的に主となるコース料理の中の構成やメニュー考案の主導権はシェフやパティシエにありますが、サービスチームはお客様のリアクションを伝え、より良い形にブラッシュアップする役割を果たします。料理の提供だけでなく、食事の空間や演出も大切な要素です。
「他店の料理やサービスを体験することで、『LUBANO』ならではの魅力を磨くヒントを得ています。また、ワインのペアリングや生産者を招いた特別なイベントを開催することもあり、お客様の満足度を高めるうえで大事な要素だと考えています」(林氏)
イタリアンシェフ渾身の料理ラインナップ
取材時は春という季節柄、「LUBANO」では旬の食材を活かしたメニューが登場していました。その中から、特に印象に残った3品を紹介します。

サヨリは日本で春の訪れを告げる魚、ホワイトアスパラガスはヨーロッパの春の味覚。この2つを組み合わせることで、日本とヨーロッパ、それぞれの“春”を表現しました。さらに、春らしいミモザをイメージした卵の黄身と白身を使い、視覚的にも華やかに仕上げています。

「穴子と胡瓜の組み合わせは、日本では伝統的な“アナキュウ”として親しまれています。一方で、ヨーロッパではフォアグラと穴子を合わせることが多いです。この2つの要素を融合させることで、新しいけれどどこか馴染みのある味わいに仕上げました」(林氏)

甘えびを塩で脱水させ、より濃厚な旨味を引き出しました。そこに春のうすい豆のパウダーを加え、さらに唐墨でコクをプラス。まさに春満開の一皿となっています。
サービスの本質。それはお客様の期待を超えること

日々の接客を通じて、どんな些細な瞬間も大切にしているという林氏。中でも、家族三世代で訪れるお客様の対応には、特に気を引き締めるといいます。一見、何気ない日常の風景のように見えても、その場には何年も積み重ねられた家族の歴史が流れているからです。
「年に一度の貴重な集まりの場に立ち会う以上、絶対に失敗は許されません。親子三世代での食事というのは、普段から頻繁にあるわけではなく、多くの場合、数年ぶりに顔を合わせる場になります。『久しぶりに家族全員で食事をする』そんな特別な日に、私たちができることは何か。単に料理を提供するだけでなく、お客様が気持ちよく過ごせるよう、さりげない気配りを徹底することが大切です。」(林氏)
記念日の特別な演出よりも、何気ない日の感動を生むことこそが、サービスの真髄だと林氏は考えています。
「お客様が“今日は特別だった”と感じてくださるようなサービスを提供したいんです。特別な日でなくても、『またここで食事をしたい』と思っていただけるように、お客様一人ひとりの背景を考えながら、空間を作ることを大切にしています。」(林氏)
今回レポートした「LUBANO」はご宿泊以外の方の利用もOK。これまでの格式あるメインダイニングとしての魅力を保ちながらも、より幅広い客層にこのレストランの価値を伝えていくことが、次なる目標だと林氏は語ります。
上質な料理と洗練されたサービスが生み出す極上のひととき。「LUBANO」という特別な空間で、食の美学を感じる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。