TRAVEL

歩いて、学んで、ちょっぴりスリルも?
ひらすら絶景!大地と歴史を楽しむ海辺の冒険

静岡・城ヶ崎海岸の風景

~旅好き女子ライターがつづる城ヶ崎フットパスレポート~

海の香りに誘われて、今日はちょっと冒険気分――。
今回の旅の舞台は静岡・城ヶ崎。パンプスをトレッキングシューズに履き替えて、「フットパス」と呼ばれる小径を歩く散策に挑戦します。イギリス発祥のこのアクティビティは、ガイドブックに載る観光スポットだけではなく、地域の暮らしや自然を“線”でつなぎながら歩けるのが醍醐味。
今日のルートは、海辺のぼら納屋を出発し、幕末の砲台跡、断崖の吊り橋、灯台を経て、花とランプの庭園へ。歴史と自然が織りなす道を、案内人の方と一緒にのんびり2時間かけて歩いてきました。

【 フットパスとは? 】
「フットパス」とは、イギリスを発祥とする『森林や田園地帯、古い街並みなど地域に昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩くこと【Foot】ができる小径(こみち)【Path】』のことです。近年、日本においても様々な地域において各々の特徴を活かした魅力的なフットパスが整備されてきています。
エクシブ伊豆もジオパークにもなっている伊豆半島での魅力を発信するため、独自でコースを設計しております。
https://japan-footpath.jp/index.html

海辺の風情に迎えられて。散策は「ぼら納屋」から

江戸時代のぼら漁の拠点を改装した「ぼら納屋」。茅葺き屋根の風情あふれる建物はいま食事処として親しまれ、名物の金目鯛料理を目当てに訪れる人も多いそうです。
ぼら納屋の店内の様子
草木に囲まれた小道を歩く女性

フットパスの出発点は、海辺にどっしりと佇む茅葺き屋根の建物「ぼら納屋」。江戸時代に隆盛を誇ったぼら漁の拠点を改装したもので、いまは伊豆の味覚を楽しめる食事処になっています。梁の太い木組みや低い天井に、どこか懐かしい温もりが漂っていて、入口に立つとつかの間のタイムスリップ気分に。
そんなぼら納屋の軒先を通り抜けると、ふわりと漂ってきたのは伊豆名産・金目鯛の煮つけの香り。つやつやと照りのある切り身の写真がメニューに並んでいて、つい足が止まります。実はホテルで朝食をしっかり済ませたばかりなのに「ぐ~」とお腹が反応。我ながら“色気より食い気”が身に染みる瞬間です…。帰ったら何食べよう?
そうこうしていると「こんにちは!」と現れたのが本日の案内人さん。日に焼けた笑顔で「ここからの海は絶景。入場料とりたいくらい(笑)」と軽いジャブ。でも、その一言でぐっと距離が近くなるから不思議です。観光スポットを点で巡るだけでは聞けない、地元ならではの物語や歴史を教えてもらえるのも、このフットパスの醍醐味。
潮騒を背に、深呼吸をひとつ。スニーカーのひもを結び直して、2時間の小さな冒険がいよいよスタートです。

幕末の面影をたどって。砲台跡から断崖絶壁の吊り橋へ!

約4000年前の噴火がつくり出した断崖にかかる「門脇吊橋」。長さ48メートル、高さ23メートルの橋からは、城ヶ崎海岸ならではのダイナミックな景観を一望できます。
城ヶ崎海岸の荒磯と海の景色
城ヶ崎海岸にかかる門脇吊橋の風景

出発して約15分。緑の小径をのぼっていくと、木々の間からひょっこり姿を現したのは幕末砲台跡です。「幕末の頃、黒船の来航に備えて設置されたんですよ」と案内人さん。
かつては異国の船影をにらんでいたであろう大砲も、150年の時を経た今は、ただ穏やかな海を見つめるばかり。強張っていたはずの視線が、いまはのんびりと潮騒に溶け込んでいるように見えて、思わず胸の奥がふっとやわらかくなりました。
さらに15分。視界がぱっと開けた先に現れたのは、断崖絶壁と荒々しい波、その上に架かる「門脇吊橋」です。長さ48メートル、高さ23メートル。足を踏み出した瞬間、板の下から吹き上げる風とわずかな揺れに、思わず「ひっ…!」。慌てて笑ってごまかしましたが、心臓はばくばくです。
手すりを握りしめながら恐る恐る進むわたしを見て、案内人さんがにっこり。
「大丈夫、大丈夫!一昨日なんて子犬を連れたおばあちゃんがゆうゆう渡っていたし(笑)」。そんな軽口に背中を押されて、ちらりと下をのぞけば、ごつごつとした溶岩の岩肌と打ち寄せる荒波。ぞくりとする恐怖と、空も海も一面ブルーに染まる解放感。その両方に揺さぶられながら、一歩一歩を進めました。
橋を渡りきったところで、案内人さんが教えてくれたのが「半四郎落とし」の伝説。背負った海草の重みで崖下に落ちてしまった半四郎さんの悲話は、この断崖の荒々しさとどこか重なって胸に響きます。
伝説に耳を傾けながら見下ろす海は、さっきまでの“怖い海”ではなく、“人の記憶を抱えた海”。その静かな青さが、しばらく瞼に焼きついて離れませんでした。

足取り軽くたどり着いた、青空のフィナーレ

海辺の小径を歩き切った先に現れるのは「ニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデン」。異国情緒ただようゲートに出迎えられると、旅のフィナーレにふさわしい華やぎを感じます。

吊り橋を渡りきると、すぐ目の前に白くそびえる門脇埼灯台が現れます。城ヶ崎海岸のシンボルともいえる灯台は、のぼれば360度のパノラマ。ふもとの売店にはスイーツや軽食も並んでいて、さっきまで緊張でこわばっていた頬がゆるみそう。外国からの旅行客もベンチでのんびりくつろいでいて、思わず「私もここでソフトクリーム片手に3時間ぐらい居座りたい」と心が揺れました。
近くには昭和ムード歌謡の名曲「城ヶ崎ブルース」の歌碑も。歌詞を前に「どんな歌でしたっけ?」と聞いてみると、案内人さんが「〽ゆかねばならぬ~」とワンフレーズ披露。潮騒をBGMにした意外な名調子に、「これはフルコーラスで聴きたい!」と本気で思ってしまいました。観光案内だけじゃなく、芸の幅も広いなんて…さすが地元のベテランです。
灯台での休憩を切り上げ、さらに道を進むと、岬が点々と続きます。「ひらね」「しんのり」「ひら根」…ユニークな名前についての解説を案内人さんから聞きながら、海岸線の複雑さを実感。断崖にぶつかる波の音、潮風に揺れる松林、溶岩が刻んだ岩肌――自然が見せる景観は、どこを切り取ってもドラマチックです!
やがて視界の先に、ビビッドな佇まいのニューヨークランプミュージアム&フラワーガーデンが姿を現しました。およそ2時間、森も海も歴史も、自分の足でつないできたからこそ、伊豆高原の物語が立体的に浮かび上がってきたように感じます。


2時間のフットパスは、まるで大自然のショーケースを歩くようでした。森の緑と溶岩の黒、太平洋の青と白い灯台――。足を進めるたびに景色が切り替わり、潮風や波音、草木の香りが五感を楽しませてくれます。いわば、観光名所を“点”で巡るのではなく、自然を“線”でつなぐ散策。歩きながら出会った小さな岬の名前も、松林を抜ける風も、すべてがこの土地ならではの記憶に…。
聞けば今回歩いたコースとは別に全長約6kmの「自然研究路」もあるとか。いつかそちらにもチャレンジしようという決意をして、城ヶ崎を後にしたのでした。

2025.5.7

・写真はイメージを含みます。また、撮影当時の情報を基に記事にしており、現在の景観や記事内容と異なる場合がございます。予めご了承ください。